生栄軒

隠れた久留米の老舗


久留米市日吉町26-19
2005年9月

ずいぶん前から気にはなっていたものの、昔ながらの寂れた飲屋街にある事と、この手の店にありがちな「どうやったらこんなの作れるの?」的な後悔型反省自己嫌悪に陥るのが恐くて、長いこと足を踏み入れずにいた。
そんな2005年の暑い夏の日、WestPointでの録音編集作業が一段落付いた時誰からともなく「ラーメン行きましょうか?」との声。「んじゃ今日は丸幸やね」と向かったところな〜んと定休日ではありませんか!「どこいく?何にする?」と悩んでるところへWP中垣氏の口から「信用金庫の裏手にあるラーメン屋に行ってみようか」と大冒険的発言。それぞれに「いやぁ俺も前々から気になっていたのよ」と賛成の声が上がる。13時をちょいと過ぎた頃。

入り口の開き戸を開けると、いま食べ終えたばかりという感じのサラリーマン(常連風)がカウンターに一人。ちなみにカウンターは5人掛けで入って正面に入り口と並行にある。入り口左手に座敷風小テーブルが2つだが狭くて8人は座れまい。全体的な雰囲気は昭和30〜40年代という作り(当時から変わっていないのかもしれないが)。厨房もこぢんまりとしていて、豚骨特有のくさいスープの匂いがほとんどしない。「やっぱ騙されたか?」と早くも後悔の心に支配されそうになるがグッとこらえる。厨房の中には70歳前後の女性店主ひとり。で先客のサラリーマンおじさん、俺たちがカウンターに座ると「そいじゃまた!」と店を出て行った。
何にしようかとカウンターの上の壁にあるメニューを見る。ラーメン450円(セット500円)高菜めし(400円)その他もろもろ・・・。すかさず「セットはサラダとメシがついていてお得ですよ」とおばさんの説明。セットひとつとラーメン2杯それに高菜めしを注文。
「この店は何年くらいなるんですか?」と聞いてみる。
「この店になって30年、屋台からすると43年になるとよ」
43年と云えば1968年昭和37年ではないか。で詳しく聞くと今の南京千両や淡海があったところに屋台を出していたそうで、隣には大砲ラーメンの屋台があったそうだ。曰く「今はマスコミやらなんやらでおいしかち云われる店もあるばってん、久留米にゃま〜だおいしか店のいっぱいあるとにねぇ、そげな店はマスコミにゃでらっさんけんね、にぃちゃんたちゃ知らんめぇ?」
知っとるばい!と云いたいところだがも少し聞いてみる。
「昔おやじに食べに連れていかれよった小さか頃ば思い出したぁ・・・ち云わっしゃるたい、あんた達くらいの年代にゃぁ懐かしかっちゃなかかね」「今のラーメンはなんでんかんでん入れてから何のラーメンかわからんごとなっとる。ラーメンなんちゃら(ラーメンフェスティバルのことらしい)に行ってみたつばってん、ありゃ何かわからんじゃったもんねぇ、ラーメンも変わってしもうたっちゃろうね・・・。ばってんあたしが作るラーメンな昔から作り方いっちょん変わっとらんけん、ほんなこつ昔の久留米ラーメンじゃんね。こんやり方しかしきらんけんねぇ・・・」
などなど、当時の久留米の賑わいやらいろんな話を聞きながら出来上がりを待つ。ここまで云われりゃそりゃ期待するに決まっとろうもん!おばしゃんじゃん!・・・という感じか。
しかし改めて「豚骨の匂い」がしないラーメン屋である。

そうこうすること10分弱。出来上がりました。

見てくれ的にはまさしく昔の久留米ラーメンである。スープの色合いといい濃さといい麺の太さといい、久留米ラーメンそのものである。

※紅ショウガは最初から入れないでおくれ!スープがあっさりサラサラしている。ラードが少ない。でも豚骨はしっかり出ているしスープの濃さも十分である。ほんとうに懐かしい味だ! 麺もわりと太めのカンスイ多めの久留米の麺だ! グルソウがほとんど気にならないくらいの量なのは正統久留米ラーメンとは云えない気もするが、これはよしとする!
チャーシューがバラ肉でないのが寂しい気もするが、これが当時の作り方でチャーシューも当時から変わっていないのなら文句を云うのはやめとこう。
これなら毎日食べても問題ない。飽きない味だ。

おばさんが云うように妙に懐かしい!
昔、潘陽軒も知久留もこんな味だったよなぁ・・・。

いやぁよかったよかった。おばさんありがとう!また来るからね。
昔は賑わいを見せていたであろう商店街。
この風景だけで昭和33年生まれの私は郷愁を感じ、何故だかすごく落ち着くのです。

2006.3.14


Jimmy'sBarLoungeでダニー馬場氏のライブがあり、ラーメン好きのNIDO氏のリクエストに、久留米の隠れた名店を紹介することにした。この日の写真はこの一枚だけだが、前回よりも醤油が効いていて最近の久留米風てなかんじでした。

2008年9月11日
夜の生栄軒。
ここいら一帯は昭和の空気を感じられるよかところ。